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#009  『 栗 』

 正月でおせちを食べている最中、「おせちでは何が好き?」 と問われた。料理の名前をよく知らない私は一瞬戸惑ったのだが、とっさに『栗きんとん』 と答えた。実際、私は栗にはちょっとだけ特別な思い入れがある。

 母の実家に、大きな栗の木があった。毎年秋になると、そこへ栗拾いに行くのがとても楽しみだった。
 地面に落ちているいがぐりを両足を使ってうまく剥いていくと、中から栗の実が顔を出す。妹と粒の大きさを競ったりもしたものだ。集めた栗はゆでて食べれば甘いおやつになったし、ご飯と一緒に炊き込んで栗ご飯にして食べたりもした。もちろんどちらも大好物だった。
 そんなわけで、栗は今でも私の中で愛着のある植物であり、ワンランク上の食欲を喚起させてくれる食べ物なのだ。

 それにしても、なぜ栗はあんなに見るにも痛々しいトゲを身にまとっているのだろう。しかも中の実はつるんとかわいらしい物であるというギャップが、また何とも言えない妙な取り合わせである。だが、だからこそ愛すべき対象になっているとも言えるのだが。

 写真は今の私の実家にある栗の木である。まだ青い時期のものだが、初々しいトゲと言うのもなかなか風流なものである。大人になった今も、私は相変わらず自分の家で栗拾いにいそしむのである。
               (08年 1月 13日 記)
  
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