Goodwood Cafe top
Woody Note top
Woody Note  ウッディ・ノート
■Note #002 山寺・遊仙峡を登る
 山形の有名観光スポット『山寺立石寺』。夏休みシーズンともなれば、かなりの観光客でにぎわう場所だ。
 今日はその立石寺を左に見ながら、駐車場の呼び込みのオバチャンたちの横をすり抜ける。しかし相変わらずここのオバチャンたちの呼び込みの手並みは鮮やかだ。僕の前を走っていた県外ナンバーが、また一台吸い寄せられるように有料駐車場に引き込まれていった。
 観光中心街を抜け、細く曲がりくねったダート・ロードに入ってしばらく走ると、さっきまでの喧騒とはかけ離れた別世界のような静かな山奥にたどり着く。そこが秘境、『遊仙峡』だ。路肩の狭い駐車場に車を置いてから、沢沿いのコースに分け入る。


 両側にそそり立つ岩壁の谷底に、苔むした巨岩がごろごろと並び、そこを鎖やはしごで登ってゆく。
 まるで『もののけ姫』の世界。今にも岩陰からサンが現れて「去れ!ここは人間の来るところではない!」と一喝されそうな雰囲気である。
 


岩の間には清流が流れ、ところどころに滝や淵がある。
 ここには小学生時代から何度か遊びに来ているが、小さい頃は裸になって淵で泳いだりもした。ただし水はかなり冷たい。

 ペンキで書かれた矢印が岩のトンネルの闇の中へと登山者を誘う。一瞬躊躇するが、その恐怖心に克たなければ終点にはたどり着けない。…と言ってもトンネルは短いのだが。
 それでも出口の光を見た時には、気分はインディ・ジョーンズになりきっている。(あのテーマ曲が頭の中でエンドレス再生♪)
 

 そんなことをくりかえし、沢を登る事1時間半弱。終点の通称『岩小屋』にたどり着いた。

 終点には一本のくるみの木が立っている。ほんとに沢のど真ん中に登山者を出迎えるように立っていて、僕はいつもここでこの木に挨拶することにしている。

 昼食。沢のせせらぎの音を聞きながら食べるおにぎりの美味いこと!
 携帯用のガスコンロを持って行き、沢の水を沸かして味噌汁やコーヒーを作る。インスタントだが、これまた何より美味い。
 しかしなぜ男と言うものは山に行くと料理(と言うほどのものでもないが)がしたくなるのだろう。

 てな感じの『遊仙峡』。下山はなだらかな別ルートがあるので20分ほどでスイスイ降りる。
 
 今日ここを久しぶりに登りながら、「ここは少年を男にする場所だな。」と思った。
 安易なハイカーを拒絶するような難所の数々に焚き付けけられるアドベンチャー魂。同行の人を気遣うことで自然に芽生える強さと優しさ。
 実際私は小学生の時に初めて父に連れられてここを登った日、自分が一回り大きくなったような気がしたのを覚えている。無骨な巨岩たちと格闘しながら生まれるプリミティブな感情は、街中で暮らしているだけではなかなか感じることが出来ない生きていくための重要な活力である。やはりそういったものは、自然原始に近い場所で生まれるものなのだ。

 …なんてたいそうなことを書いてきたが、単純にスリリングで楽しい沢登りが体験できる場所である。小学生でも登れるくらいなので、装備をしっかりして行けばどうって事はない。夏の避暑にも、秋の紅葉にも最高のスポット。興味がわいた方は是非登ってみては。

(※アクセスは山寺中心街から二口峠方面へ。地図にも載っている。装備は濡れても底の滑らない靴を。)
(2007年8月12日 記)
Woody Note top に戻る