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#005 京都 清水寺、梅の香。

 私はこのギャラリーに『Tokyo』という別枠を設けるくらい東京と言う街が好きなのだが、東京と同じくらいに思い入れのある町がある。その町とは、京都である。

 とは言うものの、実は京都へは二年前に一度行ったことがあるだけである。しかもその時は、楽しかった旅行としての思い出は残ったけれども、京都の町自体に関してはそれほど深い印象は持たなかった。有名な寺社仏閣はたくさんあるが、それ以外の場所は日本の他の都市の風景と変わらないではないか、と言うのが最初の印象だったからだ。ヨーロッパの古い都市が中世の石造りの町並みをそっくり残しているように、京都にも町そのものが歴史の形であることを、私は無意識に望んでいたのである。

 だがその旅から帰ってのち、私は次第に京都の魅力に取り付かれていくようになった。それまで気づかなかったが、巷には京都に関する情報が満ち溢れている。雑誌やテレビの旅特集、京都を舞台にしたドラマや小説。そして多くの人たちが語るその古都の魅力…。つまり私は二年前のわずか数日の体験に、後付けで多くの情報を肉付けしていくことによって、京の町の深い魅力の奥底へと誘われていく事になったわけである。

 さて前置きが長くなってしまったが、写真はその二年前に訪れた清水寺でのものである。季節が三月であったために花の季節にはまだ遠く、京市街にはまだ寒々とした冬の気配が色濃い時期だったのだが、ここの梅の花だけは、近い春を華々しく告げていた。
 私の京都のイメージは、季節に関して言えば冬のモノクロのなかに鮮やかに浮かぶこの梅の桃色が一枚、そんなところである。これから長い時間をかけて、京都の色とりどりの表情を見て行きたいと思っている。


                       (08年 1月 31日 記)
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